新しく住む部屋が決まり、いよいよ賃貸契約へと進む段階は、新生活への期待が最も高まる瞬間です。しかし実際の現場では、お気に入りの物件に申し込みを済ませたにもかかわらず、提出書類の不備が原因で審査が止まり、後から申し込んだ別の希望者に部屋を譲ることになってしまうケースが少なくありません。
特に都市部の人気物件や引っ越しシーズンの部屋探しは、スピードが物を言います。大家さんや家賃保証会社は、申し込みの早さや審査完了の速さで入居者を決めることが多いため、必要な書類を不備なく素早く提出できるかどうかが、部屋探しの成否を左右することもあります。
賃貸契約でまず厳しくチェックされるのが本人確認書類です。これは単に名前と住所を確認するだけのものではなく、書類の組み合わせや記載内容から、社会的な信用度や現在の生活の実態までがある程度読み取られています。この記事では、主な本人確認書類の基準から、属性ごとに必要になる特殊な書類、審査担当者が見ているポイント、そしてマイナンバーカードを提出する際の注意点までを紹介します。
まず押さえておきたい主要な本人確認書類

これを出しておけば本人確認がひとまず完了するという、代表的な書類の基準を見ていきましょう。
もっとも信頼されているのが運転免許証です。表面と裏面の両方のコピーが必要になり、引っ越し後に住所変更をしておらず、表面の住所と現住所が食い違っているケースが不備として目立ちます。有効期限内であることも忘れずに確認しておきましょう。
マイナンバーカードは、プラスチック製の顔写真付きカードのみが有効で、紙製の通知カードは本人確認書類として認められません。表面に顔写真や住所などが記載されているため、提出するのは表面のみで大丈夫です。
パスポートを使う場合は、顔写真のページと住所が記載された所持人記入欄の両方が必要になります。2020年2月4日以降に発行された新しいパスポートは住所欄自体が廃止されているため、それだけでは不完全とみなされ、住民票などの補助書類が別途必要になります。
外国籍の方であれば、在留カードや特別永住者証明書が必須の書類です。表裏両面が求められるほか、在留資格の種類や在留期間もチェックされます。契約期間よりも在留期間の残りが短い場合は、審査が厳しくなることもあるため注意しておきましょう。
顔写真がない書類はどう組み合わせるか
運転免許証もマイナンバーカードもパスポートも手元にない場合でも、書類の組み合わせによって本人確認を成立させることができます。顔写真のない書類が単体で認められにくいのは、なりすましのリスクが高まるためで、複数の書類を組み合わせることで、本人が実在し、実際にその住所に暮らしているという裏付けを取っているわけです。
もっとも確実なのは、健康保険証と住民票の写しを組み合わせる方法です。住民票で現住所が、保険証で社会的な所属が証明されるため、どの保証会社でも通りやすい組み合わせになります。引っ越したばかりで住民票がまだ手元にない場合は、健康保険証と公共料金の領収書を組み合わせる方法もあります。氏名と現住所が明記された、発行から3ヶ月以内の電気・ガス・水道・NHKなどの領収書が対象になり、スマホ代の領収書は認められないことが多いので気をつけてください。

属性によって必要になる書類
契約者の職業や年齢、立場によっては、通常の本人確認書類に加えて追加の証明が求められることがあります。学生が契約者や入居者になる場合は、学生証や合格通知書のコピーに加えて、実際に家賃を支払う親の本人確認書類と収入証明書が同時に必要になることが一般的です。未成年者や新社会人の場合は、親が直筆で署名し実印を押した親権者同意書と、親の本人確認書類が求められます。
求職中や転職活動中であれば、内定が出ていれば内定通知書、まだ無職であれば家賃2年分程度の貯蓄を示す残高証明書が目安になります。法人契約で会社名義で借りる場合は、履歴事項全部証明書や法人の印鑑証明書、会社案内に加えて、実際に入居する社員個人の本人確認書類と社員証のコピーも必要になります。自分の状況に近いものをあらかじめ把握しておくと、審査の準備がスムーズになります。
| 属性 | 必要となる特殊書類 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| 学生が契約者・入居者になる場合 | 学生証、または合格通知書・入学許可書のコピー | 実際に家賃を支払う親の本人確認書類と収入証明書も同時に必要 |
| 未成年者・新社会人の場合 | 親権者同意書 | 親が直筆で署名・実印を押した同意書と親の本人確認書類が必要 |
| 求職中(無職)・転職活動中の場合 | 残高証明書、または内定通知書 | 内定が出ていれば内定通知書、無職の場合は家賃2年分程度の貯蓄を示す残高証明が目安 |
| 法人契約で会社名義で借りる場合 | 履歴事項全部証明書、法人の印鑑証明書、会社案内 | 入居する社員個人の本人確認書類と社員証のコピーも併せて必要 |
審査担当者は書類のどこを見ているのか
保証会社や大家さんの担当者は、提出された書類をただ眺めているわけではなく、申込書の内容と食い違いがないかを確認しています。運転免許証の番号の最後の1桁は、その免許証が過去に何回再発行されたかを示す数字で、極端に大きい場合は自己管理の面で慎重に見られることがあります。健康保険証に記載されている資格取得年月日と、申込書に書かれた勤続年数が食い違っていると、内容に疑問を持たれることもあります。また、書類の写真の印象も意外と見られており、清潔感のある写真であることが、審査をスムーズに進める一助になります。
マイナンバーカードを提出する際の注意点

マイナンバーカードは便利な書類ですが、賃貸契約の実務では他の書類にはない注意点があります。カードの裏面には12桁の個人番号が印字されており、この番号は行政機関での手続きなど、法律で定められた限られた目的以外での収集がマイナンバー法によって禁止されています。不動産会社や家賃保証会社、個人の大家さんには、この番号を収集する権限がないため、裏表両面をコピーして送ってしまうと、預かった書類を破棄したうえで表面のみの再送を求められ、かえって手続きが遅れてしまいます。
コピー機で印刷する場合は表面のみをセットし、スマートフォンで撮影する場合も裏面は撮影しないようにしましょう。表面に記載されている性別や臓器提供意思表示欄についても、付箋などで隠した状態で撮影することを勧めている保証会社が増えています。
スマホで撮影して送る前に確認したいこと
近年の申し込みは、紙のコピーを郵送するスタイルから、スマートフォンで撮影してWEBフォームやチャットで送るスタイルが主流になっています。送信前に、書類の四隅が画面にきちんと収まっているか、照明の反射で文字が読みにくくなっていないか、手ブレやピントのズレで住所や生年月日がぼやけていないかを確認しておくと、不備による再提出を防ぎやすくなります。裏面に変更がなくても裏面の画像を用意しておくこと、パスポートなら顔写真のページと住所が記載されたページの両方を撮っておくことも忘れずに。そして、マイナンバーカードの裏面を誤って送信フォルダに入れていないかは、必ず最後に確認しておきたいポイントです。
まとめ

運転免許証やマイナンバーカードの表面は、一度で本人確認が完了する頼れる書類です。パスポートは2020年2月以降の発行分に住所欄がないため、住民票などの補助書類が必要になります。顔写真のない健康保険証を使う場合は、住民票や公共料金の領収書との組み合わせが求められ、学生や未成年、求職中、法人契約といった属性ごとに必要な書類も異なります。マイナンバーカードの裏面は法律で収集が禁止されているため、絶対にコピーして渡さないようにしましょう。
部屋探しでは家賃の交渉や間取りの検討に多くの時間をかけがちですが、申し込み時の書類準備の丁寧さも、意外と結果を左右します。不備のない書類を整えて提出することは、大家さんや保証会社に信頼感を伝えることにもつながります。ここで紹介したポイントを参考に、手続きのストレスを減らしながら、新生活へのスタートを気持ちよく切ってください。
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